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審査総評

総評

◇技術的にもデザイン的にも素晴らしいものが入選されたと思う。市場性なども重要と思うが、さらに今後に期待。

◇素晴らしい作品をたくさん拝見できた。新たな手法へのチャレンジもいくつか見れて良かった。伝統的な技の細かな仕事ぶりが見られて大変勉強になった。

◇技術的にはそれぞれ力の入った作品が多く見られたが、全体的におとなしく感じられた。

◇型・手描・浸染・機械それぞれのメリットをどう活用し、何を表現するかが大切。どの技法であってもコンセプトと構成力が大事である。

◇技術に著しい差はなかったが、技術を活かした模様になっているかどうかが分かれ目になった気がする。この競技会は技術を競うものだが、模様も評価に影響してしまう。

◇様々な技法・アイテム・産地ごとの特徴が表れ「全国」ならではの競技会となっている。今回作品数が少なくなったのが残念で、今後もより多くの力作が出品されることを願っている。


1部門 型染着尺

◇それぞれに美しく技術やアイデアが目を引くものが沢山あった。消費者の目線で、これを着てみたいと思うものを選んだ。

◇離れて見た時と近づいて見た時の違いで驚きのあるものを選んだ。甲乙つけ難かった。

◇型染の技術的なものには申し分のない出来栄えであるが、何か物足りない。着尺にもう少しつっこんだ柄が欲しい。

◇技法や型を複合的に用い単調にならないように工夫された面白味のある作品が多かった。

◇新しい試みが多く、力強いが、商品として成立するかが考えどころ。惜しい。

◇江戸小紋の複合による作品が多く、また技術を活かした高度な作品が技法の主張に行きすぎることなく着姿を想像させてくれる。また色彩的にもコーディネイトを連想させるものが多くみられました。


第2部門 型染絵羽

◇大胆な柄、繊細なもの、価格を考えたものなど、作り手の思いがそれぞれ伝わってきた。

◇大きい布地できれいに見え、近くでも細かさがあるものを選んだ。

◇大きい、そんな切り口で柄構成をされた作品が多く見られるが、型でやる面白さや色遣いがもっとあっても良いのではないか。

◇場面が大きいだけに構成力が問われる。衣桁に掛けた時と着装した時の両方から成立させることが大切。

◇訪問着で挑戦した大胆な絵柄は敬意を表するが、今一つ成功していないようである。方向性は良いと思う。たとえば色の組み合わせが果たしてこれで良いのか、の検討を深めると良いのでは。

◇出品点数が少ないのは残念。江戸小紋的なものが多く、また力作が多い反面、型友禅的なものが少なく多様性が少ないようだ。小紋加工の複合と摺りやぼかしとの複合作品に目が行く。


第3部門 手描染作品(振袖、留袖、訪問着)

◇華やかな柄や細やかな表現方法に工夫があった。

◇全体の印象で、絵としての素晴らしさが感じられた作品を選んだ。

◇技術的になんら遜色は無いが、なにか物足りない。

◇型を使用しない分、自由度が高まり表現の幅が広がる。着る人、着るシーンなどを具体的にイメージした作品から楽しさが伝わる。

◇目論見を立てても、その通りにいっていない品は残念。センスの問題か。

◇多様な技法がそれぞれの特徴を活かし、見ごたえのある作品が多い。また着姿を意識して部位ごとの強弱が考えられている「きもの」が多数ある。また産地ごとの技法や色彩が活きている。


第4部門 手描染作品(付下げ、帯、祝い着その他)

◇世相を反映した作品、伝統的手法の作品、今までにない手法の作品など「せめてる」ものが多いと感じた。

◇パッと見で目に付く作品で少し新しい感じのものを選んだ。

◇図柄的には皆さん色々と変化をされ、古典あり、抽象的な物もあり、なかなか面白い所のある作品になっていた。

◇手描きの柔らかく繊細なタッチを活かし濃淡や強弱をつけディティールに凝った、まとまり感のある上品な作品が多かった。

◇古典と新機軸に大きく分かれていたように思う。技術は高いが、センスが問われるところが課題か。

◇第3部門の絵羽と比べ、より遊べる要素のあるアイテムだと思うが、固い意匠が多くその点は残念。一方手組の繊細なタッチや細かな彩色で奥行きのある作品はこの部門らしいものとなっている。


第5部門 無地染

◇作品数が少ないのが残念だった。染の難しさなど、説明あるとよいかなと思う。

◇色が美しく染められていて、生地の柄がきれいに出るよう染められている。

◇落ち着いた色合いとしっかりとした色合いで選んだ。

◇審査基準に照らし合わせると濃度差のある作品はNGであるが、作品の味わい表現力と相いれない部分があるのが難しい。

◇高田委員からも指摘があったが、板締めはこれに含めると選考しにくい。絵羽の形式も、ムラなく染まっているかより、となりあわせた裂地とのコーディネイトに意識がいくので、同じカテゴリーで競うべきかを再考した方が公正と思う。

◇技法でくくる競技会なので、浸染で行う無地染と板締め絞りを同部門で競う難しさがある。浸染の技術という観点も大切で、浸みムラの均一的な発生が作品の仕上がりに奥行きをもたらしている。


第6部門 機械染

◇機械ならではの良さのアピールがもっと出ていると良いかなと思う。作品は良いものが沢山あった。

◇手描きとは区別ができない仕上がりだと思った。作品番号F03が機械でできるのは驚いた。

◇機械染でのあじがある表現が出てきている物を選んだ。

◇機械による合理性の中にも配色の妙など、人の感性が感じられる作品を選んだ。

◇手染めと同じ方向の模様を目指すなら価格を入れてほしい。この分野は競合をさけ、機械ならではの柄ゆきを目指す方がふさわしい。

◇機械染の得意な細かな文様から、多色の組み合わせまで幅広い作品が数は少ないながらも出品され見ごたえがある。特に多色ロールを型合わせする技術は素晴らしい作品を生み出している


審査委員長からの総評

   全国の染色産地の作品が集う競技会らしく、多様な技術や色彩感覚の作品によって見ごたえのあるものとなっている。型染部門では、型の組み合わせや型の用い方によって今年も新しい表現が生み出されており、また見て着て楽しそうな作品が多く見られた。手描き部門では、型染以上に多様な技法が駆使されている。

 技法的な多様性の一方で、意匠においては今年はやや新進性に乏しかったように思える。作品中で感じたのは用いられた生地素材の広がりで、近年単衣・薄物が着用されることが増えたことが反映されたものと思われるが、市場ニーズが出品作品の構成にしっかりと映し出されており、技法の競技会として難しい素材にチャレンジされていると思う。透け感のある素材への型染、地紋を活かした作品などが今年の特徴としてあげられる。

 今回作品に込めた文を付けたことで、製作者の想いが伝わったように思う。

着装した際に顔に最も近い衿廻りが一般的な絵羽の展示では見られない。着姿に近い感覚で見られるような展示方法を考えても良いと思う。

この競技会が染色の新たな可能性を拓くことを期待している。

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