総評
◇昨年までと比べて十数点少なくなっただけで、かなり見ごたえの面で魅力が低下したように思います。できれば多様な産地から均等に百点を超える作品の出品があると、より良い競技会になろうかと思います。
◇色ムラ等技術的に欠くものは見当たらず。デザインは年配者向けが多く、私自身は好むものが多かったが、もっと明るい色味や元気なデザインも見てみたい。
◇会場でも申し上げましたが、昔高島屋の上品会を思い出しました。久しぶりにThe着物をみせて頂いた気がしました。懐かしくほっこりさせていただきました。京都に居りますと着物が洋服(ドレス)に感じます。
◇儀礼的な装いではなく、自分自身の趣味やお洒落のために着るきものが増えたことは、きもの着用機会の増加にもつながり好ましい。今後も時代に即応しながら進化を続けてほしい。
第1部門 型染着尺
◇以前よりも作品の幅が狭くなったように感じる。また、例年出品されている工房において、同様の技法を用いつつ、新しい表現をされている作品はおもしろく感じた。
◇細い地を、見せるか、隠すか、全体バランスの良いものが多い。
◇染の事、全く解りません。着尺小紋良いと思いますし、少し地色が渋かったように感じました。
◇全身に広がる細かい柄という特性を活かし、洋服に例えればワンピースのような洒落感のある作品が多くあった。色柄に現代のセンスが取り入れられている。
◇A08、A28 細かい小紋と色の変化が素晴らしい。A24 数少ない更紗で柄も美しい。
◇色見の良い傾向にありました。去年より良いと感じました。
第2部門 型染絵羽
◇今回は加工方法のくくりを厳密にされたことで、技法の多様性は少なくなった反面、小紋染の応用による作品が多くみられ細かな技法の違いや構図の違いがより分かるように思います。
◇ぼかしでは配色により、邪魔となるかアクセントになるか、難しい。紋様の色使いに好みが出るだろう。
◇絵羽柄には少しがっかりしました。昭和の雰囲気が多かった様に思います。霞暈しの訪問着私は好きです。
◇絵羽であっても古典的なフォーマルではなく、着装そのものを楽しめるタイプが増えた。技法のミックスや型の組合せ等複合的な要素が楽しい。
◇B10、B06 繊細な小紋と全体のバランスが素晴らしい。
◇B07は去年も同趣向で出ていました。意欲作ですね。
第3部門 手描染作品(振袖、留袖、訪問着)
◇多産地の多様な技術や地域ならではの色合いなど、全部門の中で最も見ごたえのある作品群でした。アイテム毎の表現の変化も魅力の一つだと思います。
◇同じ型で濃淡のものは奥行きが出て良い。色数は多or少と極端なものが多い(審査が難しい)模様は古風なものが多いが色味で今風になっている。
◇第2部門と同じく、新しさ斬新さがない様に思いました。投票するのに苦労しました。
◇明るい色彩、さっぱりとした柄行きの洗練された作品が今の時代のムードに合っているが、欲を言えばこの部門にはラグジュアリーなものも欲しい。
◇C13 斬新な手法とデザイン、C02 美しさがわかりやすい、C09 手描きでここまで描きあげたのはすごい、C14 一見わかりづらかったが空の模様が美しく描かれており素晴らしい。あまり見かけないデザイン。
◇古典柄は技術(デッサン力)が出ますね。
第4部門 手描染作品(付下げ、帯、祝い着その他)
◇手描に用いる染液ならではの、生地への浸透と鮮やかな発色や、あまり目にすることが少ない技法で表現されたものもあり、見る人の直感に訴える作品が多く見られた。
◇ろうけつ染そのものではなく、地の織や色、模様とのバランスが良いものがすがすがしい。
◇帯の作品、よかったと思います。
◇ローケツが多くあったが、もう少し色柄に工夫が欲しい。手仕事ならではの味わい、ぬくもり感を丁寧に伝えてほしい。
◇D14 おもしろい生地への作品。難易度が高そう。D09 グラデーションが美しい。
D16 目を引く作品。D10 絵が独特でおもしろい。
◇複数の技法を重ねて使った作品は、工夫が見られます。
第5部門 無地染
◇出そうとされた元の色見本がないので、無地染の重要な要素である色の再現性は分かりません。無地は色みの深さ、つりぼかしはグラデーションの美しさで選びました。
◇難しい。地柄との色の調和で選んだが、色むら等見られないので、技術に差はない。
◇地色がもう少し明るい方が良かった様に思いました。
◇選定が困難である。比較しやすいように同じ生地で染めてみてはどうか。
◇E02 無地染であるのに多色で染められている。興味深い。
第6部門 機械染
◇インクジェットと機械捺染を同部門で取り扱うのは少し無理があるように思います。機械染は機械を用いて職人さんの技術が染表現となる一方、インクジェットはデータの作り方の方が重要かと。
◇インクジェットは、ぼかしが難しく、より自然に見えるものを選んだ。
◇絵羽より着尺作品良い様に思いました。
◇均一平面的にならないような工夫が必要である。
◇F01 手染と区別がつかない出来、デザインがモダンで良い。
F07 デザインが良い。
審査委員長からの総評
全国の産地からの小紋や友禅の技法を駆使した作品を集められた競技会を永年に渡って継続開催され72回目を迎えられましたこと敬意をもってお祝い申し上げます。
部門毎の技法を厳密にされたことで、特に型染め部門での細かな技法の応用のやり方、表現がより見える方となったように思います。また手描部門は表現が多様となりボリューム感とともに見ごたえがありました。型で主に用いる色糊による染着と手描で用いる染液の生地への浸透の違いか、発色はもとより模様の表現に与える影響で技法毎の作品群の違いが明確に表れたことは、染色の競技会として分かりやすい方向であったように思います。
反面、機械染の部門では、動力による機械を用いて職人さんの技で染める機械捺染とデータの作り方が主たる要素となるインクジェットを同部門で評価するのは難しいのではないでしょうか。また無地染部門では、製品としての発色のよさと、つりぼかしによる模様染があり比べることが難しく感じます。
本競技会が「全国」の産地の作品の競技会として歴史を刻まれて来られたことに鑑み、より幅広い産地からの出品により充実した競技会として継続されること切に願っております。